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有賀 明美 スペシャルインタビュー

有賀 明美 スペシャルインタビュー

スペシャルアドバイザー 有賀 明美 さん(Ariga Akemi)
業界経験 20年

1977年生まれ。フェリス女学院大学卒業後、ハウスウェディングのパイオニアである株式会社テイクアンドギヴ・ニーズに入社。型にはまった結婚式が一般的だった中、「結婚式にサプライズ」という新しい概念をつくりだした「オリジナルウェディング」の先駆者で業界のカリスマ的存在。2000年から現在まで1000組以上の国内外のウェディングを監修・担当してきた。そのクリエイティビティーは高く評価され、業界外でも秋元康氏やおちまさと氏とのコラボレーションによる商品開発にも携わる。

また、ご新郎ご新婦の心に深く入り込みつくりだすウェディングは時に「絆の修復」などの奇跡を生み「これまで参加した結婚式でもっとも感動した」と、数多くの芸能人、アーティスト、スポーツ選手から指名を受け、結婚式を手掛けてきた。自らのブログに掲載した感動ウェディングストーリー「優しい記憶」は、たちまちツイッターで拡散され2011年の年間注目記事ランキングで7位にランクインされ話題となった。

2014年に自身も結婚し、出産を経験。 少子化や未婚率の上昇、晩婚化の現状を受け、「結婚」そのものや「夫婦・家族」の有り方についての啓発活動もスタート。幅広い分野に活躍の場を広げ、各業界から注目を浴びている。

ウェディングプランナー有賀明美 オフィシャルサイト

■Chapter.1 「想い」

ウェディングプランナーになりたいと思ったきっかけは?

私は、大学4年生までは何の取り柄もない学生でした。熱中する武器みたいなものは無く、あまり夢を描くようなタイプではなかったのです。大学4年まで漠然としていて、そこで初めて、自分の人生をノートに整理しました。

・人から褒められたこと
・やっていて嬉しかったこと
・怒られたこと
・いつも注意されたこと
・やっていて面白くなかったこと

小学生から高3までの通信簿を全てだして思い出しながら、自己分析ノートを書きました。そうすることで、自分が、誰かに感謝されることをすごく喜ぶタイプだということが分かったのです。

例えば、文化祭でのお化け屋敷の話しです。私は全身ジャージを着て、お化け役として足を触って驚かせる係(笑)。このお化け屋敷が、全校生徒の投票で一番面白かった企画の大賞を受賞しました。そしてクラス中のみんなから、名前を呼んで「有賀、ありがとうね!」と言われたのです。それがすごく嬉しくて。

 "ありがとう"にもいろんなものがありますが、自分だけに温度の高い"ありがとう"を、名前を呼んで言われたい。そういう仕事がいいなと。そういう付加価値のつけられる仕事って何だろうなといろんな職種を調べていくうちに、ウェディングプランナーを見つけました。これが一つ目のきっかけです。

もう一つが、「創る」ということです。
自己分析ノートの中で、私が唯一褒められたことに「創る」ことがありました。創作ダンスの優勝など全てに「創る」があったので、仕事でも「創る」自分を見つけたいと思いました。そんなときに、T&Gの「結婚式を創りませんか?」という広告が目にとまったのです。当時はまだ15人の小さな会社の採用広告で、もしも「作る」だったら、私は受けなかったと思います。でも、「あっ、"創れる"仕事なんだ!」と。この仕事で、もしかしたら「有賀さん、ありがとう」って言ってもらえるかもしれない。そう思ってアクションしました。

自己分析のすすめ

私は学生さん達によく訊くことがあります。「あなたにしかない武器はなんですか?」と。すると「笑顔です」と答えるのですが、笑顔の素敵な人はごまんといます。しっかり自己分析することで、「○○な笑顔です」と言えるのです。

このように、他人にあって自分に無いものはいくらでも出てくるけど、他人に無くて自分にしかないたった一つの魅力に気付いていない学生さんがけっこう多いように感じます。でもそれでは、すぐ自信を失いがちです。実際、彼らに自己分析シートを配布して「小中高の成功、失敗体験」を書いてもらうと分かります。「あっ、だからこの学生さんは強いんだ」とか。人生には、全てきっかけがあるのだと思います。自分がたった一つの自分の強みに気付くことで、自信を持てるようになります。

例えば、同じ「ウェディングプランナーになりたい」という人たちでも、そのルーツは違います。ウェディングプランナーになるべき人もいれば、サービス、ドレス、お花がよい場合もあります。分業制で輝く人もいれば、ホテルで輝く人もいます。

「プランナー志望でそんなにファッションのことが好きだけど、相手に深く入り込むのが苦手なら、むしろスタイリストやったら?」。「ヘアメイクになろうとしているけど、あなたはコミュニケーション力が高いから、ヘアメイク知識の豊富なプランナーに挑戦したら?」といったようなフィードバックをします。こうした自己分析をしないまま飛び込むと、上手くいかなかったときに原因が分からず諦めてしまいがちですので、ぜひ、自己分析をおすすめします。

 私がなぜそこまで深掘り出来たのかというと、自分には何もなかったからです。どちらかというと、「劣等感」からのスタートでした。就活のとき、私は、何がしたいのか?、何ができるのか?、何業界をアタックしたいのか?が分かりませんでした。これまで、あまりにも漠然と生きてきたのです。だから、一回整理しようと思いました。

「落ち着きが無い」。「忘れ物が多い」。「注意散漫」。小中高ずっと一貫して先生に書かれていたことです。決められたことを出来ず、興味のないことにはぼおっとしたり、ルールに沿って生きることが苦手でした。これは弱みであり、でも、武器でもありました。だから消去法で、銀行員、数字・お金にかかわること等、決めたことをルール通りに求められるところを私は受けてはいけないと除外しました。逆に褒められていたところは、「負けず嫌い」、「人の真似がきらい」、「(文化際などの)企画」、「アルバイト体験」いった面でした。

ティッシュ配りから学んだこと

大学生のときに時給800円でティッシュを配るアルバイトを4日間やったことがあります。1日目は、モチベーション低くつまらなかったです。だから、プラスアルファのことをしようと思い、代理店の方に何個配ったらいいのかを訊くと、「だいたい1日500個以上、それを超えてくれたら嬉しいよね」と。それを聞いて、昨日私たちは300個後半だったので、明日は500個以上を絶対に配ろうと思いました。4人チームなので、1人1時間あたりこれくらい配れば達成するよねと逆算し、最低が500個ならそれを超えてやろうと、ゲーム感覚で取り組みました。

そして2日目は、受け取ってもらうためにはどうすればいいかを考え、スピードやかける声を変えたり、立ち位置を工夫したりしました。そうすると、段々面白くなってきたのです。結果、同じ給与なのにこの日は550個を配れて、代理店の方はちょっと嬉しそうでした。

3日目。このアルバイトは、渋谷、池袋、新宿等のエリアでも、各チームが同じ条件で取り組んでいました。私は他のチームには絶対に負けたくないと思い、メンバーを集めて「渋谷には負けたくないよねっ!」などと周囲を巻き込み、みんなも頑張り出してくれたのです。結果、800個くらい配れました。

最終日の4日目は1,000個近くいきました。すると事務所から電話がかかってきたのです。「クライアントさんから、『各チーム同じ条件だったのに池袋チームの配布数が尋常じゃないけど、一体何があったの?』と問い合わせがあったよ」と。「有賀という一人の女の子がやる気を出して頑張ったんです」。「なら、次のイベントではその子を指名でお願いしたい」というやり取りがあったとのこと。当時で1,500人以上の登録者がいましたが、その後も、事務所が「有賀さんに頼むと頑張ってくれるから」と優先的に仕事をくれたのです。私の身長では、通常できない仕事も頼んでもらえるようになりました。

この経験から私は、期待に応えること、付加価値をつけることの楽しさを学ぶことができました。私が欲しかった「有賀さん、ありがとう」。500個目標に対して1,000個近く配って初めて有賀明美の価値を出せた。お金は増えないけれども喜んでもらって、達成感があるものだなって。これは今でも、プランナーでも一緒です。「あ、これくらい求めているんだろうな~」と。ゲーム感覚で、「そこをどう超えようか?」。超えないと、ありがとうの温度があがらないので。
自己分析では、こうしたアルバイト経験からの学びも、整理することができました。

■Chapter.2 「転機」

ウェディングプランナーになって最初にぶつかった壁

"有賀明美"というウェディングプランナー像は、「明るく元気な有賀さん」。それで頑張ろう。全てのお客様に、同じように接客する。今思えば、全て自分軸でお客様と向き合っていました。相手にとってどうかや、おふたりが何を求めているか等、おふたり側では全く考えていなかったのです。50組のお客様に同じスタンス、同じしゃべり口調、同じツールで、同じ流れで、私は結婚式を創っていました。

転機は、式後にご新婦のお母様から頂いたお電話です。このときの新郎新婦は口下手で、打合せのときも直接のお返事や会話をしてくれませんでした。打合せ中も、何かあれば一度お母様に耳打ちし、お母様が私に答える形でした。当時の私は他に何件もお客様を抱えていたこともあり、内心では「この時間はとっても無駄だな、、、」と思っていました。電話をしても折り返しは必ずお母様からで、「お二人の意思は無いのかな、、、」とも思っていました。

ご新郎は仕事をしていませんでした。23歳の女子大生的な感覚からすると、「仕事もしていないのに結婚するなんて、、、」、「ご新婦はそれでいいのかな、、、」、「幸せになれるのかな、、、」と思ったものでした。そのうち私は、新郎新婦と直接会話するのを諦め、お母様に電話をするようになりました。最終的にこの結婚式は、言われたことをミスなく創りあげてゴールしました。私が入社1年目のときのことです。「あ、簡単な仕事かも」と思ったものでした。達成感、やりがいもさほど無く、「こんなものかな~」と。

お母様は電話で私にこうおっしゃいました。「有賀さん、これはクレームではなく、老婆心として聞いて欲しいの。昨日、(新郎新婦の)二人が結婚式の写真集を見て、こう話していました。『寂しかったね、、、』。『有賀さんに、もっとかまってもらいたかったね。でも、言えなかったね、、、』」。

「有賀さん、あなたは二人とコミュニケーションを取ることを、どこかの段階で諦めましたよね?私は、こんな二人が式場を自分達で決めてきたのでびっくりしたものでした。二人は、『有賀さんなら向き合って、僕たちらしい結婚式を創ってくれると思った』と言っていました。でもあなたは、途中で二人と向き合うのを諦めた。もちろん、忙しいのも分かっていた。でもね、今日私は、『寂しかった』という二人の言葉を伝えたかったの。今後のあなたのために」。

私は何のミスもしていない、それがミッション。でも「寂しい」と言われ、最初は意味が分からなかったのです。満たされてないおふたり。「何が足りなかったのかなぁ?」。「あれ、私はおふたりのことを実は何も知らない」。それなのに、結婚式が出来てしまったことに衝撃を受けました。そこで、おふたりのファイルを片っ端から読み直しました。すると、なんとなくは見ていたアンケートのご新郎の特技のピアノのところに、良く見たら「作曲」と書かれていました。将来の夢には「プロのピアニスト」とも、小さく書かれていました。そう、ご新郎は、そのために働いていなかったのです。

この結婚式の当日の会場の雰囲気。ご新婦の親族側では、「この相手の方は大丈夫なの?、お仕事は何されているの?」と。会社関係の人は誰もいないし、主賓の挨拶もなく、会社の紹介もありませんでした。「仕事もしていないのに結婚して大丈夫なの・・?」。こういった声が、私の耳にも聞こえてきました。新郎のご両親は、肩身が狭そうにしていました。

私もご新婦に対して、「働いていない彼と結婚と苦労するだろうな、いいのかな、、、」と思っていました。ところがご新婦は、幸せを感じる瞬間は?というアンケートの答えに、「夢を追う彼を支えること」と書かれていたのです。彼女にとっては、幸せなことだったのです。私はプランナーとして、完全に見過ごしていました。もしもそれを確認出来ていたら、ご新郎はきっとピアノで曲を作れたでしょうから、「応援するご新婦のために、感謝の気持ちをこめた曲をサプライズで贈りましょう!」と提案していたはず。そしてそれを演奏していたら、その腕前を聞いて新郎のご両親も「ほら、うちの息子はすごいでしょう」と、肩身の狭い思いをすることはなかったでしょう。会場が応援する空気に変わったかもしれません。もしかしたら、子供が生まれたら子守歌として聞かせられたかもしれません。もっと先には子供達が、「この曲はパパがママに作った曲」とずっと愛される曲になっていたかもしれません。自分次第でこの家族の未来が変わったのに、私が何もしなかったから、何も起きなかったのです。それが私にとって衝撃的でした。

「今までの結婚式って何だったんだろう?」と。「自分の存在次第で、誰かの未来が変わってしまう怖さから逃げたい」。「この仕事は怖い仕事」。気付けなかったから何もしなかった。私が担当したばかりに、一つの家族の未来を変えてしまった。もし私でなければ、、、。

初めて、私はこの仕事を辞めたいと思いました。私は向いていないんじゃないかと。元々、人と向き合うのはそんなに得意じゃなかった。もう辞めようと、、、。でも、お母様が『今後、二度と二人のような思いをさせない素敵なプランナーになって』と、せっかく電話して下さったのだから、その思いを踏みにじることはしたくない。"変わったんだ"と言えるまでは辞めない。頑張ってみよう。
「でも、変わるためにはどうしたらいいんだろう?思ったよりも深いぞ、この仕事」。このことをきっかけに、「ものすごくおふたりのことを知らなきゃ。心を閉ざす人ほど向き合わなきゃ。時間をかけて知らなきゃ」と私は思うようになりました。

この失敗が、ベースにあります。その後も、コミュニケーションを諦めそうになったときは、いまだに20年たっても頭に浮かぶのです。お母様の「あなたは二人と向き合うのを諦めましたね」という言葉を。「あ、また同じことをしようとしている。ちゃんと向き合わなきゃ」と。まさに転機でした。これがなければ、気づかなかったかも。おかげでその後は相手にすごく向き合うようになり、いろんなことに気付けるようになりました。言葉じゃないコミュニケーション。心の声をくみ取れるように。そうすると、一歩ぐっと踏み込めるようになりました。相手が、心の扉をちょっと開けてくれた瞬間が分かり、そうすると、結婚式の内容が変わっていきました。

「あのとき、有賀さんが気付いてくれて私達に提案してくれたから、進行にこのシーンが加わり、結果的に自分達が感動できました」。
同じ会場、同じ金額でも、"ありがとう"が変わってきたのです。式後にいきなり抱きつかれて、「有賀さんに会えたことが奇跡でした!」ということも起きるようになりました。こんなに変わるんだ、初めて自分の存在意義、価値を感じるようになりました。そして思うのは、最後のお披楽喜のあとの新郎新婦との時間は、自分にとっての「結果発表」ということ。自分がどれだけお二人にとって重要な存在か、大切と思われているか、そのときに表れる、緊張する瞬間なのです。

この出来事のあと私は、相手に深く入り込むことが出来るようになり、そして、サプライズも出来るようになっていきました。プランナー2年目くらいのことでした。

お客様に向き合うことで、むしろ生産性は上げられる?

「お客様に深く向き合うことで、より多くの時間を取られてしまわないか?」ということですが、打合せ時間は変わっていないのです。むしろ、減らすことができている部分もあります。

例えば。今まで「バージンロードをどなたと歩きますか?」という質問の目的は確認でした。相手に深く向き合うようになってからは、このときご新婦がどんな表情をしているのかに気を配れるようになりました。嬉しそうな場合と、一瞬、間がある場合の違いに気付くようになりました。「あれ、いま一瞬躊躇された」と。
この質問にかけた時間は変わっていませんが、「もしかしたら、お父様と歩くことにためらいがある?だとしたら確かめなきゃ」と思い、メモに「お父様を深掘り」と書くように。その後「お父様のキャラクター」には、アンテナを高くはるようになります。

場合によってはバージンロードの前に、親子で向き合う時間を入れた方がいいかな。であれば、「ファミリーセレモニーいかがですか?」という提案もします。その意図としては、この5分で親子のわだかまりをとかす時間を用意すること。ここがキモ。緊張しそうならカメラマンを交えて談笑を。過度な演出ではなく、上手に歩かせることではなく。プランナーとしての視点が変わりました。
「お父様はどんな気持ちで歩く?」、「お子様はどういう気持ちで見てる?」。視点を広げながら、進行を深掘りするようになったのです。こうした視点を加えることで、プランニングに悩む時間を逆に減らすことができると思います。観察をすることで分かるのです。逆に、お二人のことを知らずに創る進行は悩みます。

別の例です。このおふたりは付き合いが長いし、地元のゲストも多い。結婚式後も頻繁に会える方々がゲストなら、テーブルラウンドはあまり意味がないかな。だったら、普段は中々会えない遠方からのおじいちゃんとの時間に5分を使った方がいい。テーブルラウンドはしない。おじいちゃんは目が悪いので導線を変えて、「まず、おじいちゃんに"ありがとう"と伝えてから入場しませんか?」と提案します。相手を深く知らなかったら、いつも通りの導線になっていたでしょう。

おふたりと深く向きあうと分かります。分からないからこそ、全て出してしまうのです。打合せのときの向き合っている時間のアンテナを増やすだけで、実は作業労力は減るのです。私は2年目に8件/月以上を担当していました。新規接客のときから観察しているから、1組1組ヒアリングすると1組1組進め方が違い、効率的にできるのです。「あ、これはいらないや」、「だったら、共感してくれる料理で単価アップしよう」等と判断できるのです。このように、おふたりに深く向き合うほど仕事が効率的になり、そして、より多くの"ありがとう"をもらえるようになるのです。

忙しすぎてウェディングプランナーを諦めてしまう人に対してお伝えしたいことは、「(もっと)おふたりに向き合っていいんです」ということ。そして、「結果、単価アップに繋がります」ということ。深く向き合うことで、相手は「あ、この人たちは本当に必要なものを持ってきてくれるな」と信頼して下さるのです。

■Chapter.3 「ブライダル業界における、人生100年時代のキャリアデザイン」

20代の働き方は?

自分の可能性は、他人の方が気付けるのではないかと思っています。例えば私は過去に、業績のテコ入れを頼まれたことがありました。最初はなぜ私なのか疑問でしたが、「おまえしかいない」と言われて。得意じゃありませんでしたが、できる限り期待に応えようと、ガムシャラにやりました。
結果、「あれ、苦手かと思ったけど出来たぞ」と。マネジメントの経験が増えました。最初はやりたくなかったけど。だから、それ以降は自分のモットーとして、「自分のやりたいことを言わない」としています。

このように、今の自分に誰かが期待したことには、まずのってみることにしました。ある日突然、「グループ会社へ行ってよ(異動)」という話しもありました。「有賀ならできる」という、スキルを超えた期待がのってきているミッションには、飛び込むことで成長するのだと。実際はやりたくないことが多いけれども、絶対に断らないようにしています。

20代は、やりたくないことを経験しました。30代は、過去のキャリアを整理しました。特にママになると、時間をそれまでのようには使えません。減った時間で、今まで以上に貢献する必要があります。20代の経験が、その方法を見つけるのに活きました。

だから、やる気のある20代のうちに「まずはやってみる」方がいいと思います。自分にしか出来ないことは何か、自分じゃなくても出来ることは何か、自分じゃないと出来ないことは何か。これらを探すための旅が20代で、この20代は未来のためにあるのだと私は思っています。

30代の働き方は?

20代のファーストステージはがむしゃらに。30代からのセカンドステージは家族優先に。だから、私は結婚するまでは仕事に全力を尽くし、求められていることは引き受けて経験を増やそうと考えていました。

でも30代になると体力が落ち、仕事の出来る時間も減ってきます。だから、私は28歳くらいからブレーキをかけるようにしてきました。「キャパオーバーになるぞ」と。やったことは、仕事の優先順位をつけて、初めて"自分へのご褒美"を頭にいれるようにしたことです。「一生これまでのような働き方は出来ないな」と。

当時は、占いに行くようになったり、昔だったら頑張れたのに頑張らない自分に対して自己嫌悪したり、会社のせいにしたり。もやもやし、誰の人生なのか、自分はどうしたいのかが見えていませんでした。そこで、エクセルで自分の人生グラフを未来に向けて作ったのです。「結婚して38歳までに子供を生みたい。そうすると35歳までには結婚する必要があるな。今は32歳で結婚まであと3年あるから、この期間は婚活しながら働こう」といった具合に。

このように逆算することで、スッキリするようになりました。そして、自分へのご褒美です。「出会うために、いついつに旅行しよう」と自分のモチベーションのあがる予定を先々にいれるのです。そうすると、「ここの3日間はつぶれるぞ。じゃあ、今日頑張ろう」。そうしていくと、「私は一体何のためにこんな頑張っているのだろう、、、」と思わなくなるのです。逆算し、未来が見えると、頑張れるようになりました。

この頃にはキャリアを積んできているので、効率的に7ピタ(19時退社)出来るようになりました。今日絶対やらなければいけないことを朝ホワイトボードに書き、終わったら一つひとつ消しこんでいく。チームにも宣言する。プライベートも充実させるように。そうすると、仕事のスピードもあがり、焦りもなくなってきました。

私が思うに、ブライダル業界の人達は頑張りすぎて、身体を壊しがちです。人がいいから、いくらでも頑張れるから。でも、自分自身が幸せで、余裕で満たされていないと、お客様に余裕をもって向き合えないから、"自分へのご褒美"をつくろう。そう考えてやってきました。30代はブレーキをかけてもいいから、その分20代を頑張る。30代の準備のためにも。

ブライダル人財のセカンドキャリア。ママさんになってからの働き方は?

セカンドキャリア。特にママさんになってからの復帰後は、全部をやろうとしない方がよいのかなと思います。「何でも出来ます」というスタンスよりも、「私はここの領域で貢献できます」という方が良いのかなと。
会社に対して、「これは絶対に負けない」というものがあれば、時間が短くても結果を出して働けるのではないでしょうか。そうやって、自分のキャリアを整理、棚卸することをおすすめします。

例えば、あるママプランナーは営業が抜群に得意なので、戻ってきても営業だけに絞り、助っ人プランナーとして活躍しています。また、ずっと人事で教育担当だったママさんは、スポットで研修を担当する形で復帰しています。うまく復帰しているママさんたちの共通項は、「何でも出来ます、やります」ではなく、自分の武器を見つけて活かしていることです。自分の経験から、若いうちにやりたくないこともやった方がこの武器は磨かれるのだと思い、同僚人事部長の「求められた以上、絶対やる」というモットーには、強く共感します。

私の場合はお話ししてきたように、20代のファーストステージでは全てをやってみました。期待されている以上は苦手に思われたものにも飛び込み、例えばネットショップの店長もやりました。でも、実際にやってみるとけっこう面白いものでした。その後、産休・育休中に約一年半立ち止まり、自分のキャリアを整理しました。

結婚してからは価値観が変わりました。それまではお客様、仕事、自分のためでしたが、家族のために。育休からの復帰後当初は焦りや罪悪感がありましたが、昔のような働き方を目指すのはもうやめようと思いました。今は、何があっても優先順位は家族を第一にしようと。そこを犠牲にしてまで仕事をやってはいけない。主人にも、「月にどのくらいお迎えに行ってくれる?」など裏を固めました。家族の理解と協力体制がないと両立は難しいのかなと。

このときには、仕事に費やせる時間が減ったときに、特に貢献できること、会社にメリットあることは何だろうかと考えました。時間の濃度をどのように上げようかと。「これって私じゃなければダメかな?」、「いや、これは後輩に任せよう」、「これは絶対に私しかできないな」。私の場合、計画性やオペレーション、人を巻き込むこととか、苦手なことの方が多いです。こうした苦手なものを思い切って外しました。そして、深く掘ることは絶対負けないので、復帰後はそこに絞ることにしました。

これらを整理した上で会社にプレゼンしたのです。プランニングは若い人に任せ、自分は若いプランナーを育てた方が会社にもいいと整理できたので、「プランナー教育やらせて下さい」と。こうした整理をしないと、現役時代と同じことをやろうとしてしまいがちです。実際、会社からそれを求められて、引き受けてしまった例も知っています。結果、仕事と家庭のバランスが崩れてしまっていました。欲張らない勇気が必要なのではないでしょうか。

セカンドキャリア。大事なことは、働く目的を自分の中で整理すること。特にママさんの復帰後のスタンスは、人によって違って良いと思います。ロールモデルをそのまま真似しないこと。例えば、両親のサポート体制一つとってもいろんなケースがありすぎるので。会社側も、こうした個人差をよく理解し、その人に何を求めるのかを整理した上でマッチングさせることが必要だと、私は考えています。

■Chapter.4 「メッセージ」

結婚式では、「One more chance」が言えないけれど

これまでウェディングプランナーを20年間やってきて。誰かの人生を幸せにする仕事だと思っていましたが、気付けば仕事を通して、いろんな家族の形、愛の形、友情、親子愛、、こうしたものを自分の目で見てふれ合うことで、自分の人生がすごく豊かになりました。人として大切なことを、私は仕事を通して教わりました。ウェディングプランナーは、本当にすごい仕事です。

世の中にサービス業はたくさんあるけれども、ここまで人と人が向き合ってやる仕事は他に無いのではないでしょうか。サービス業という言葉では言い表せないような気がします。加えて女性として、母親としても、大切なことを教わりました。

例えば、
「あっ、"ありがとう"という言葉一つでこんな嬉しい顔をするんだ」。
「"ありがとう"という言葉一つ無いことで、10年間もこんな風になってしまうんだ」。「親子でも、ちゃんと伝えないと。血が繋がっていてもこんなふうに行き違いが起きてしまうんだなぁ、言葉で伝えないと」。
いろんなお客様から、本当にたくさんのことを教わりました。

最近行った、ある証券会社向けに、ブライダルのノウハウをベースにした講話をする機会を頂いたときのことです。
まず、お客様と向き合う経験を極めると、いろんな仕事に活かせることを改めて実感しました。①営業力、②コミュニケーション力、③販売力、④オペレーション力、⑤企画力。こんなに求められる仕事は確かに大変(笑)。だけど、まだ20代のうちから飛び込むことで、この5大スキルを身体で覚えられます。いずれ自分の家族に対しても役立つし、自分のステップアップにも、さらには業界外でも役立つのです。本当にすごいことだなと。

もう一つ、新たに気付かされたこと。その証券会社の営業の方が、「期待を超えることは、僕たちの業界では目指したくない。全力でやってお客様の期待値を超えてしまい、それが当たり前だと思われると、次回以降のハードルが上がってしまうからです。継続するサービスなので、期待をちょっとだけ超えましょうと言わざるを得ません。でも、結婚式はそこをドーンと超えられるのでうらやましいです」。

結婚式では、「One more chance」が言えないけれど。

一回だからこそ、お客様に思いっきり向き合って、ぶつかって出来る仕事はブライダルだけで、ここまで付加価値をつけられる業界はあまり多くないかもしれません。セーブをしないと。でも、結婚式ではそうは言われません。一生に一回だから。あなたの付加価値が、やればやるほど伝わります。お客様からすると、「この人にお願いして本当に良かった」と。この付加価値で一生覚えておいてもらえる。この日の思い出を何十年と大切にして生きていくわけです。この一発勝負にかける面白さ。連続ドラマではなく、1話完結の映画。それが、ウェディングプランナーの魅力だと思います。

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