INTERVIEW INDEX
創業からわずか6年で東証マザーズへ上場(その後東証一部へ指定替)。現在は二代目社長となった荻野洋基氏のもとで再成長中の株式会社ノバレーゼ。その荻野社長の「業績向上のカギは、スタッフが働きやすい環境を整えること」という考えのもと、「有給休暇100%取得の義務化」など、常識にとらわれず従業員・お客様本位の変革を推進している同社の変化や取り組みについて、お話しを伺いました。ぜひ、ご覧になってみて下さい。
ソラキャリ:
本日は宜しくお願い致します。まず組織についてお伺いします。荻野社長は、どのようなリーダーシップを発揮されているのでしょうか?
前野様:
一言ひとことにも影響力はあるのですが、事細かに「ああしろこうしろ」と言うことはあまりなく、基本的には任せて、考えさせ、自らの意志で仕事をさせるスタイルです。もちろん、明らかに違うとき等はテコ入れもしますが。私自身も、採用面については全面的に任せてもらっています。
また、GM陣を集めたミーティングでも、スタッフに対して「もっと意見や、アイデアを。」という発信を強め、まさにみんなでこの会社を創っていこうというメッセージを発信しています。
職場の雰囲気はフラットで、違いは単に役割の違いにすぎず、みんなが対等な精神です。
ソラキャリ:
素晴らしいですね。居心地の良さに甘えず、一人ひとりが更に進化していくために、どのような取り組みをされていますか?
前野様:
経営陣からは、「もっと自分たちが経営者のつもりで組織の活性化に向けて提案してほしい」といったリクエストが出ています。そしてそれに対して、GM陣以下、みんな頑張って勉強しています。このように、経営陣が、さらに次世代に向けて下を育てています。また、弊社は、経営陣に対して臆せずモノを申せる文化が良いのではないでしょうか。実際そういうスタッフが、より大きな成長のチャンスを得て、たくさんチャレンジ出来ています。
ソラキャリ:
会議体では、どのような工夫をされていますか?
前野様:
例えば、エリア会議では、エリアを東西に分け、隔月に開催します。この会議ではGMが現場の課題を話し、解決策をTODOまで落とし込み、次回までに発表する形でPDCAを回す仕組みにしました。
ソラキャリ:
環境変化に適合させるため、組織を小単位に分け、意思決定をスピーディーにするための仕組みですね。
前野様:
また、新規事業提案制度では、昨年の1月には新たに子会社が2つ生まれ、スタッフの想いが形になりました。
・パーティードレスなどのレンタル事業「株式会社アンドユー」
・ブライダル特化の広告代理事業「株式会社Do」
またもともとあったレストラン特化型事業を分社化し、以下の会社も生まれています。
・レストラン運営を行う「株式会社ブロスダイニング」
ソラキャリ:
子会社が一気に3つもですかっ!?ただただ、凄いですね。
前野様:
そして、副業も解禁にしました。「個々のスキルを高めてほしい」という、会社からのメッセージです。
ソラキャリ:
こうしてしっかりと結果も出ているところが素晴しいですね。
続いて、会社として大切にしているものを教えてください。
前野様:
なんと言っても、創業当時から変わらない理念、そしてノバレーゼで働く「人」です。
ソラキャリ:
お客様や世の中の人々に、感動と元気を与え続ける企業でありたいという思いですね。
前野様:
はい。そのために、まずはスタッフを大切にしています。そして、数字にはあまり重きをおきません。全社へのメッセージでも、数字はいったん横において、スタッフとお客様が命と、繰り返し説いています。
ソラキャリ:
理念の「体現」には、愚直な取り組みが必要ですよね。あえて質問ですが、スタッフとお客様ではどちらが大事なのでしょうか?
前野様:
もちろんどちらも重要ですが、最近荻野は、スタッフの方が大事と言っているときもあります。
ソラキャリ:
元気なスタッフがあって初めて、お客様満足が可能ですからね。
ノバレーゼ様といえば、結婚式に対する誠実さにもこだわっていらっしゃいますよね。こうした誠実さや仲間意識は、意図的に残そうとされているのか、それとも自然体というか、DNAとして組織に染みついているものなのでしょうか?
前野様:
両方だと思います。特にトップメッセージでも強く、継続して、発信しています。例えば、ある会場が数字に走りかけたりすると、エリア会議で荻野や営業本部長が厳しく叱責します。
経営陣からGMへ、GMからスタッフへ。私たちが大切にしていることは、こうして組織にもしっかりと落としていきます。そのほか、採用・総務人事・教育研修・広報も、こうしたメッセージをふまえて発信、対応していきます。その結果として、組織全体にDNAとしても染みついているのではないでしょうか。
ソラキャリ:
トップだけでなく、様々なレイヤーや部門からも同じメッセージが継続して発信されるので、全社に濃紺なく染み渡るのですね。
前野様:
はい。また、私たちは即決(※)禁止としています。
※新郎新婦が初めて式場見学にきたその日に、お申込み頂くこと。
ソラキャリ:
えっ!?即決をしていないのですか?
前野様:
はい。創業以来、私たちは絶対に即決を迫りません。「今日お申込みいただけたらお値引きする」こともしません。「この日は人気で埋まっています」とか、自社都合の誘導もしません。全てのお客様には平等に接します。新規接客の時間も、どのお客様も1時間30分と決めています。
ソラキャリ:
素晴しいですね。このように、なぜ理想を建前ではなく、実際に実現できているのでしょうか?
前野様:
やはりトップメッセージにつきます。「数字はお客様の笑顔の総和」。「頑張ったら、あとから数字はついてくる」。「お客様にどれだけ貢献したのかを振り返るもの」。こうしたメッセージを、決してブレることなく発信し続けています。
ソラキャリ:
まさにリーダーシップですね。評価制度としては、数字でない目標もおいているのでしょうか?
前野様:
私達はMBO(目標管理制度)で ①業績目標(数字)と ②プロセス目標(※) を設定し、ウエイト配分は5:5です。また、360度評価制度/コンピテンシーアセスメントも導入しています。
※組織の活性化に向けて半年間でやるべきことの取り組み過程を、目標化、評価する。
ソラキャリ:
ウエイト配分が5:5のところが、これまでの話しと繋がりますね。
前野様:
特にエリアごとでは、プロセスも加味した各エリア内での相対評価としています。どうしても数字(集客)にはエリア特性で差があるため、エリアごとに切り分けて評価することで、不平等差が生じないようにしています。
ソラキャリ:
御社では、業界の常識にとらわれない活気的なアイデアも、次から次へと出てくるところが凄いと思っているのですが、最近ではどのようなものがありますか?
前野様:
最近だと、先ほどふれた新規事業提案制度のほか、 副業制度や、逗子での海の家(ビーチカフェ/社長は二年目の女性)、地域密着イベント「純白の森ナイトミュージアム」などでしょうか。
ソラキャリ:
相変わらず先進的ですね!改めてですが、例えば 新規事業提案制度はなぜ導入されたのですか?
前野様:
まず一つは、会社として、ブライダル以外のもう一つ主軸分野を作ろうとしていること。もう一つは、スタッフがさらに活躍できる場を創りたかったからです。
ソラキャリ:
戦略の話しと同時に、スタッフとお客様が大事という理念にも通じますね。実際、毎年どのくらいの応募数があるのですか?
前野様:
毎年、数百件と応募があります。
ソラキャリ:
それはまたすごい、、、。スタッフの皆様の、その高いモチベーションは一体どこからくるのでしょうか?
前野様:
そもそも弊社のスタッフは、自分の意思で仕事をしている人が多いです。そして、自分が実現したいミッションがあり、ノバレーゼなら実現しやすそう、それを実現して世の中に貢献したいという想いで入社してきます。ですから、こうした提案制度があればそれを実現したいと、積極的にチャレンジしてくるのだと思います。
ソラキャリ:
そもそも、そういう意欲のある方が入社してくるということですね。
前野様:
はい。採用の段階で、ミッションに共感した人の集まりなのです。ですから、たたけば響きます。彼らには利他的な野心があり、意思に一貫した根拠があるので、勝手に自走してくれるのです。本当にみんなが主役となっています。
ソラキャリ:
副業制度についても、改めて詳しく教えて頂けますか。
前野様:
社員の副業を一部認める人事制度「パラノバ」を導入し、昨年9月1日から運用を始めました。本業に支障のない範囲で、社員の副業を認めます。対象者は、執行役員と正社員、キャリアシード社員(契約社員)、嘱託社員の全てに当たる計750人ほどで、勤続年数は問いません。雇用契約を結ばないフリーランスや個人事業主として、社外で働くことを認めるという内容です。
ソラキャリ:
殆どの方が対象になりますね。
前野様:
はい。目的は、社外での活動を通じて、世の中に通用する人間になって欲しいという想いと、視野の広い優秀な人材を育てる狙いですので、希望するスタッフには、積極的に活用してもらえればと思っています。
ソラキャリ:
部門や立場によっては反対もでそうですが、、。
前野様:
反対は特に無かったです。というか、これは経営陣からのアイデアでした。
ソラキャリ:
やれない理由をあげてくることも無かったのでしょうか?
前野様:
はい。無いです。ただ、希望者はやりたい仕事の内容を会社に申告し、会社は申請内容を経営会議で審議します。また、副業先では、原則雇用契約書を結ぶことはできません。
ソラキャリ:
メインの職場の仕事が疎かにならないようにですね。実施、どのような副業をされているのでしょうか?
前野様:
例えば、ライティング、家業手伝いのほか、変わったものでは昆虫のブリーダーなどにも取り組んでいます。
ソラキャリ:
ユニークですね。スタッフの受け止め方はどうですか?
前野様:
とても喜んでいます。終身雇用が限界をむかえ、人生100年時代の今、会社でそういう取り組みをしてくれるのはとても嬉しく、好意的に捉えています。
ソラキャリ:
逆に、何か懸念はありますか?
前野様:
今のところありません。正直、大変な制度という実感は全くないのです。
ソラキャリ:
それ自体がすごいですね。御社からすると、特別なことをした!という感じではないのでしょうね。
前野様:
そうですね。また、利用者の活動内容を、社内報などでスタッフに共有し、会社が副業を積極的に推進していることを発信しています。
ソラキャリ:
実行定着化、さらには効用の最大化にも注力されているのですね。採用面にも効きそうです。
前野様:
まさにそうで、求職者様からも良く聞かれます。この制度により、あくまで正社員が中心ながら、多様性を高めていきたいと考えています。
ソラキャリ:
柔軟な考え、取り組みという点では、「(ノバレーゼ卒業生への)戻ってこいよ」も、早くから取り組んでいらっしゃいますね。
前野様:
はい。文字通り、「戻ってきたければどうぞ」というスタンスです。
ソラキャリ:
ブライダル業界特有の雰囲気としては、会社を辞めるとどこか「裏切り者」的な見られ方をされることが、まだ少なくないとも聞きますが、、、。
前野様:
弊社に限っては全くないですね。ポジティブ、前向きな人が多いです。一回「家族」になった人なので、純粋に「どうぞ」、という気持ちです。
ソラキャリ:
有給休暇100%取得の義務化も、個人的にはとても衝撃的でした。どのような背景から導入されたのでしょうか?
※参考:有給休暇取得率は全産業平均で51.1%。ブライダル業界が対象となる「生活関連サービス業、娯楽業」では36.5% (「平成30年就労条件総合調査 第5表 労働者1人平均年次有給休暇の取得状況より」)。
前野様:
これまで「取得するように」と言っても、様々な理由で中々改善されませんでした。「お客様を幸せにするためにはスタッフ自身が幸せでないといけない、そのためにはきちんと休ませることが重要である」という考えを、経営陣が管理職へ直接伝えました。最初から「100%取得」という強い意思を示し、「どうしたらできるのか」を考えるように促しました。
ソラキャリ:
なるほど。導入後は、どのように定着化・サポートしていったのでしょうか?
前野様:
その年に付与される有給休暇を正社員・契約社員の部下に100%取得させることを、管理職と各レストラン料理長の義務としました。そして、対象者とその部門長で「休むための年間計画」の策定を義務づけたのです。
ソラキャリ:
なるほど。
前野様:
その年間計画を元に、取りまとめを行う総務人事部が計画通りに有休取得できるようサポートするとともに、部門ごとの達成率を公表することで、スタッフの意識付けを浸透させていきました。
ソラキャリ:
仕組みで支えていったのですね。人が足りない部門や繁忙期は、どうされたのでしょうか?
前野様:
運営の工夫によりクリア出来ました。出発点として、人がいるから回るではなく、「その人数で回す」という発想が必要なのだと思います。
ソラキャリ:
「出来るか出来ないかではなく、どうやるか?」を考えて行動するということですね。
前野様:
また、休みの日のスタッフへメール等で連絡を取ることも一切禁止にしました。
ソラキャリ:
それも衝撃的ですね!ブライダル業界にいると、もちろん良くはないのですが正直、休みの日に連絡するのは当たり前に近い感覚すらあります。当然、必要なときに限りますが。
前野様:
ここは、顧客情報を共有するシステム上に全ての商談履歴を残すことで、担当者が不在のときでも他のスタッフがフォローできる体制を構築しました。とにかくメリハリをつけることが大切です。心も体も休まる。それが、お客様へのパワーの充電にもなりますので。
ソラキャリ:
仰る通りです。でも、それをやり切るのが難しいのだと思います。素晴しいですね。スタッフの反応や様子はいかがですか?
前野様:
気持ちに余裕が出来たように思います。休みが取りやすくなったことは、お子様のいるご家庭をはじめとして、社員の家族からも好評です。組織としても、ダラダラ仕事しなくなり、限られた時間で計画的に仕事をする習慣がつきました。
ソラキャリ:
ブライダル業界は仕事の特性上、週末出勤も多いので、家族の応援を得られるのはとても大きいですね。スタッフの定着率にも、効いてきそうです。
前野様:
はい。例えば2014年の取り組み開始前と比較して、退職率は7%下がりました。実際、採用の場面でも、この取り組みに興味を示す候補者が多くなった実感があります。
ソラキャリ:
「人が大事」という会社はたくさんありそうですが、実際に制度や行動に落とし込まれてそれを実現されている会社はあまり多くないかもしれず、その点では、まさにお手本のような取り組みですね。
前野様:
最近では、これまで以上にスタッフを大切にしようと、ネガティブな理由の退職を今まで以上に抑えようという雰囲気があります。いざそういう時に出くわした時には、「会社側にも何かできることはないか?、何ができるか?」をしっかりと話し合っています。
ソラキャリ:
こうした従業員満足、ひいては顧客満足の最大化の先に、会社としては何を見据えていますか?
前野様:
結婚式を通して世の中に貢献し、ミッションを実現していくことを考えています。結婚式という得意分野で、自分達らしさを発揮していこうと。そして、時代の流れに合わせて結婚式の形を柔軟に変える。変わっていくことが必要だと考えています。
ソラキャリ:
ブライダルの事業戦略としては、いかがでしょうか?
前野様:
大きく以下3つの事業領域で考えています。
1. 真摯な結婚式を提供し続けること(ノバレーゼらしさは忘れない)
2. ウェディングの多様化に対応していくこと(ex/少人数結婚式、海外事業、リゾート婚)
3. 結婚式の周辺領域へのチャレンジ(ex/フォト婚、レンタル・パーティードレス)
ソラキャリ:
こうした挑戦や進化の先に、社会からどのような会社として認知されたいとお考えでしょうか?
前野様:
結婚式は主軸だが、人生のうちで結婚は一瞬にしかすぎません。ですからそれ以外にも、アニバーサリー事業や、誰かの人生においても大事な瞬間(ギフト、旅行、その他お祝い事など)にかかわれる事業もこれから広げて、世の中に新しい価値を提供し、貢献していきたいと考えています。それをこれから、みんなで作っていく段階です。
なお学生さんには、ノバレーゼといえば「誠実、みんなが主役、フラット、仲間が大事」という会社だと伝えています。なれ合いではなく、本当に意味での仲間意識のある会社だと。
ソラキャリ:
やはり人が中心となる会社ですね。
前野様:
はい。そしてみんなの力を借りて、引き続き、理念に基づく真摯な結婚式に、ひたむきに向き合っていきます。
ソラキャリ:
中途入社における求める人物像とはどのようなものでしょうか?
前野様:
「対人能力、協調性、企画力、課題遂行能力、文化フィット」。この5つです。 ハードルは少し高いかもしれません。
ソラキャリ:
経験者と未経験者の従業員比率はどのくらいですか?
前野様:
5:5です。上記の5つの観点で採用しています。
ソラキャリ:
中途入社者には、特にどんなことを期待しますか?
前野様:
「企画力」と「課題遂行能力」です。新卒よりも経験がありますので。この2つはマストではありませんが、中途なら期待したいです。それ以外の、「対人能力、協調性、文化フィット」の3つが、マスト条件です。
ポイントは、企画止まりではなく、実行までできる方。例えば弊社であれば、現場のGMを経て人事で活躍したり、現場、育休、新規事業開発などを経て、今は海外でのテレワークで活躍しているスタッフ等もいます。
ソラキャリ:
中途入社後に活躍できる方とそうでない方との違いは、特にどのあたりに感じますか?
前野様:
前提として、弊社における良い採用の定義は、「組織を活性化させる。モチベーション高く定着する」。それを目標に採用しています。その上で活躍できる人材の話しですが、結論、全てを自己責任に変えられる人、他責にしない人かなと思います。「あのとき、自分が、こうすれば良かった」と思える人です。
ソラキャリ:
原因自分論ですね。
前野様:
はい。もちろん、なにか失敗した時に人間ですから自己防衛反応はでるでしょうが、そこは落ち着いて、「もっと自分がこうすれば良かった」と捉えて行動できる人が、実際、入社後も活躍されています。言い換えれば、何においても圧倒的な当事者をもっている方、と言えるかもしれません。もちろん強みではあるでしょうが、ご経験やプライドを、上手く切り替えられるといいですよね。
ソラキャリ:
確かにそうですね。最後に、求職者へのメッセージをお願いします。
前野様:
組織に守られる時代はもう終わったと思っています。これからの時代、あなたに何ができますか?そのスキルで生き残らなければなりません。それを磨ける場所として、ノバレーゼがふさわしいと思ったら、ぜひ来て欲しいと思います。あなたと会社のミッションを掛け合わせて、お互いにミッションを実現できれば嬉しく思います。
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